
95歳の父と92歳の母の介護をしながら、いつの間にか自分たち夫婦のこれからを考えるようになりました。
夫は70歳、私は68歳。気づけば40年以上、単身赴任という名の「長距離夫婦」。お互いの努力と忍耐でここまで来たのだと思います。
とはいえ、正直に言えば、我慢の多い年月でした。
相手を傷つけないように言葉を飲み込み、波風を立てないように生きる――それが長年の習慣になっていました。
今になって思うのです。
「もう少し正直に話しておけばよかったかな」
「いや、話したら話したでケンカになってたかも」
そんなふうに自分で自分にツッコミを入れながら、つい笑ってしまいます。
この2〜3年は、「これからどう生きたいのか」を本気で考えてきました。
けれど、あまりにも別々の時間が長かったせいで、それぞれの生活ペースがすっかりできあがってしまいました。
いまさら一緒に暮らして、朝ごはんの時間からお風呂の温度まで合わせるのは、なかなかの挑戦です。
洗濯の干し方ひとつにも、しっかり個性が出ますしね。
そんなことを考えているうちに、ふと気づきました。
――別に、同じ屋根の下で暮らさなくてもいいのかもしれない。

お互いに会いたいときに会って、一緒にやりたいことを楽しめばいい。
それ以外の時間は、自分の好きなことをして、自由に過ごせばいい。
離れて暮らしても、心が近ければそれでいいのではないか、と。
もちろん、ここまで思えるようになるまでには、たくさんの葛藤がありました。
「なぜ老後を一人で過ごさなければならないのか」と、涙が出た夜もあります。
でも、相手を責めても何も変わりません。
悪いのは相手だけじゃなく、私にも反省すべきところがある。
そう思えるようになったのは、歳を重ねたおかげかもしれません。

これからのテーマは、「相手を責めず、自分を笑う」。
まだ体が動くうちは、自分の人生を楽しみながら、ゆっくりと答えを見つけたい。
どんな形の暮らしになったとしても、最後には「これでよかったね」と笑い合えるような終わり方をしたい――
そんなふうに思っています。
By R.Iwase




