私は、経営者やマネジャーの方々を対象に、実践的なコーチング講座を行うのが好きです。ご参加されるのは、現場の最前線で活躍されている皆さん。そのため講座の冒頭では、「コーチングの時間なんてない」「やることが増えて負担だ」といった声があがることもあります。
そんなとき、私はこうお伝えします。
「では、何か一つでも、できることから始めてみませんか?」
コーチングの土台は、信頼と安心
まず取り組んでいただきたいのは、信頼感や安心感のある職場づくりです。
といっても、特別なことをする必要はありません。
普段のコミュニケーションの“中身”を少し変えるだけで、
職場環境は大きく変わります。
心理学者ウィリアム・グラッサー博士は、「次の7つの習慣をやめるだけで、
人は十分に幸せになれる」と述べています。
どれも、今日からでも始められることばかりです。
① 批判する ②責める ③文句を言う ④ガミガミ言う ⑤脅す ⑥ 罰する
⑦ご褒美で人をコントロールする
まずは、これらの習慣を意して手放すこと。
それだけでも、コーチングへの大切な第一歩になります。
もう一歩進めて、日々の「問いかけ」も見直してみましょう。
たとえば、何か問題が起きたとき――
「どうしてこんなことになったんだ!だいたい君は……」と責めるのではなく、
「なぜこうなったと思う?どうすれば今後防げるかな?」と問いかけてみる。
こうした問いかけは、相手の思考を促し、主体性や自律性を育てるきっかけになります。
ここで、改めて考えてみてください。
あなたは、一時的な成果を追い続けたいですか?
それとも、長期的で継続的な成果を支える“人財育成”というインフラを築きたいですか?
中小企業では、「権限委譲」がしばしば課題になります。
しかし、それは一朝一夕に実現できるものではありません。
運動習慣のない人が、急に走り出しても続かないのと同じように、
上司の指示通りに動いてきた社員に対して、突然「自分で正しい答えを出せ」と言っても、うまくいかないのは当然です。
それでも経営者は、「任せた」の一言で期待を膨らませ、そのギャップに悩んでしまうことがよくあります。
中には、「自分が任せられないのがいけないのか」と自責の念にかられる方もいるでしょう。
「人を育てることの重要性」は、誰もが頭では理解していることです。
それでも、現場からはよくこうした声が聞こえてきます。
「わかってはいるけど、なかなかね……」
だからこそ、今できることを、少しずつでも始めていくことが大切なのです。
コーチングは、現場の現実に寄り添いながら、少しずつ育てていけるものです。
今日できる小さな一歩が、未来の大きな成果につながっていきます。
2025.6.10 By T.Yamamoto