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母を捨てた娘たち!? 介護の先に見えた“新たな夫婦のかたち”

施設

68歳の私には、90歳を超えた父と母がいます。

母は認知症が進み、妄想も激しく、昼夜を問わず落ち着かない状態になったため、一か月前に施設へお願いすることにしました。妹と私の二人では、もう支えきれなくなってしまったのです。

 

一方の父は、多少の物忘れはあるものの、今でもペンを持って文章を書き、食欲も旺盛。とても95歳とは思えないほど元気です。そんな父が先日、ふと口にした一言が私の胸に突き刺さりました。

 

「ばあちゃんはかわいそうだな。家族みんなに捨てられて」

……正直、カチンときました(笑)。


この1年間、父と妹と力を合わせて母を支えてきたのに、その言い方はないだろう!と。

けれど同時に、父の気持ちもわかります。長年連れ添った妻が家にいない寂しさを、“捨てられた”と表現したのでしょう。もしかすると、自分自身も「捨てた張本人」という意識があっての言葉だったのかもしれません。そう思うと、父の悲しみが胸に迫ってきます。

 

もっとも、この両親、実は夫婦仲はお世辞にも良好とは言えませんでした。

今、母は施設でスタッフに囲まれ、のんびり過ごして実に楽しそうです。

かつては「離婚したい、でももうお嫁にはいけないし」と眉間にしわを寄せていた母の顔が、嘘のように穏やかになりました。願いは、形はどうあれ叶うものなのかもしれませんね。

 おじいちゃん

一方の父も変わりました。これまではデイケアに行っても母の様子ばかり気にしていましたが、母が施設に入ってからは水を得た魚のよう。リハビリ体操に励み、食事も楽しんでいるのです。

 

つまり二人は、離れて初めて「自分らしさ」を取り戻したように見えます。

これを「夫婦円満」と呼んでいいのかどうか……娘としては複雑なところです。

 

そんな父と母を見ていると、かつて憧れだった「理想の夫婦像」は崩れてしまいました。けれど今、それぞれが自分らしく生きている姿を見て、少し羨ましくも思います。そして気づきました。冷めた目で見ることも、悪くないのだと。愛情だけでなく、ユーモアや距離感を持って見守れるからこそ、長い介護の日々に押し潰されずにいられるのだと。

 

父は父の自由を、母は母の安らぎを、それぞれの場所で手に入れました。

私は娘として、その二人を少し斜めから眺めつつ、私自身の人生に責任を持って、今ある幸せを大切に生きていこうと思います。


by R.Iwase


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2025年08月23日

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