
私たちはビジネスの現場で、気づかぬうちに戦争・軍事由来の言葉を使っていませんか?
「戦略」「戦術」といった言葉を誇らしげに使い、
お客様を「ターゲット(標的)」と呼び、
他社のお客様を「攻略」し、お客様を自社の商品やサービスで、「囲い込み」をする。
さらに「キャンペーン」を仕掛ける…。
思い返すと、私自身も20年以上前のサラリーマン時代、マーケティング戦略を立てる部署に所属していました。
ランチェスター戦略や孫子の兵法を学び、「いかにマーケットシェアを上げるか」を考える日々。
疑うことなく軍事的な言葉を使い続けていたのです。
ところが、日本経営品質賞を受賞し、顧客満足(CS)や顧客価値に真正面から向き合う環境に変わってきて、心の奥にあった違和感がはっきりしました。
「ビジネスは戦争ではない」
「お客様は標的でも攻略対象でもない」
そう気づいてからは、会社の方針説明や研修の場で、あえて軍事用語を避け、別の言葉に置き換えることを提案してきました。
戦略(strategy) ⇒ 計画、方針、ロードマップ、シナリオ
戦術(tactics) ⇒ アクションプラン、施策、実行計画
攻略(capture) ⇒ 拡販活動、積極展開、マーケット拡大
防御(defensive) ⇒ 顧客維持、離反防止、ブランド保護
囲い込み(lock-in) ⇒ ファン化、継続利用促進、長期関係構築
ターゲット(target) ⇒ 対象顧客、顧客層、理想の顧客
キャンペーン(campaign) ⇒ プロモーション、イベント、プロジェクト
実際に言っていたことの主なものを整理してみると、今では当たり前かもしれませんが、あの頃よく頑張っていたなぁと思います。
皆さんの業界にも、ほかに隠れているかもしれません。
ぜひ、軍事用語を探して、ビジネスの現場から追い出してください。
軍事用語が広まった背景
軍事用語がビジネスで広まった背景を調べてみるといくつか理由があるようです。
もともと「戦略」「戦術」は軍事に由来し、孫子やクラウゼヴィッツの兵法が経営に応用されてきました。
さらに20世紀後半、企業競争が激化する中で1987年にアル・リースやジャック・トラウトの『マーケティング戦争』が登場し、「市場=戦場」「競合=敵」という比喩が一気に広まりました。
戦争用語はインパクトがあり理解しやすかったため、経営書や教育を通じて自然に定着していったと考えられます。
しかし今や、市場はコモディティ化が進み、少子化で人口も減少しています。
拡大や奪い合いよりも、今いるお客様を大切にし、長くつながり続けることがより重要になっています。
そのときに必要なのは、「攻略」ではなく「共創」という発想です。
顧客を標的とみなして作戦を仕掛けるのではなく、パートナーとして共に未来を描く。
言葉を変えることは、考え方を変える第一歩。
これからのビジネスは、他社とは価値を高め合う競争をしながら、顧客とは一緒に価値を創造していく時代です。
顧客や社会へ価値を創造し、共に歩むことこそ、持続的な成長の源泉です。
顧客は標的じゃないー攻略より共創を。
ビジネスを戦場から引き離し、新しい共生・共創の循環社会の中で、持続可能な新たなビジネスの姿を創っていきたいものです。
By. M.Tamura




